「涙のあとに」

 第1話

これは動物の国に住んでいる1羽のウサギさんのお話です。

この国ではたくさんの動物たちが仲良く暮らしています。
海にはたくさんの魚さん。空にはたくさんの鳥さん。山にはたくさんの猿さん。もっともっとたくさんの動物たちが暮らしています。

このお話の舞台になるウサギの街は東の山のふもとにあります。
この街の真ん中にあるのがウサギ小学校です。
校庭では今日も子供たちが元気に遊んでいます。
校庭の隅ではその輪に入れず、ぽつんと独りで座っている子がいます。
いつもは元気なはずの優卯(ゆう)くんです。

優卯くんは運動会でも一等賞になるほど足が速く、いつも元気でたくさんの友達に囲まれていましたが、最近はいつも一人ぼっちです。それはどうしてでしょう?
それぞれの街の小学校には守らなければならない決まりがあります。例えば、魚小学校では「どこまで深く潜れるか競争していけません」という決まりがあるのです。
ウサギ小学校にも決まりがあります。それは「運動会以外では競走してはいけない」という決まりです。
とにかく足の速かった優卯くんはこの決まりをやぶってしまったのです。
約束を守れなかった優卯くんをみんな友達だとは思わなくなってしまったのです。
しかも、その競走に負けてしまったのです。足の速かった優卯くんが負けてしまった相手はなんとカメだったのです。
その出来事を知り、たくさんいたはずの友達はどんどん優卯くんから離れていったのです。

みなさんはもう気づきましたよね。
優卯くんは「ウサギとカメ」のお話で有名なあのウサギだったのです。

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