「涙のあとに」

 第3話

先生の優しさにふれた優卯くんは一日中泣いていたわけですが、ほかの子たちには優卯くんの気持ちはまったくわかりませんでした。
授業も終わり、下校の時間になりました。
「みんなぁ。一緒に帰ろうよ。」
優卯くんはいつもどおり、みんなに声をかけましたが、誰も振り向いてくれません
。(聞こえなかったのかな?)
そう思い、優卯くんはみんなに近づきながら、もう一度声をかけました。
「ねぇ、みんな。一緒に帰ろうよ。」
やはり誰も振り向いてくれません。
「ねぇ。みんなどうしたの?」
その言葉にようやくみんなが優卯くんの方へと振り返りました。
「だって、お前、カメに負けたんだろ。そんなのろまなやつとは一緒に帰れないよ。運動会で勝ったのも何かずるでもしたんだろ?」
「学校の決まりも守れないようなやつ、友達だと思われたくないもん。」
「お前、泣き虫だし。」
「そうだ。そうだ。泣き虫優卯。」
みんな口々に言いました。
「お前なんかもう友達でもなんでもないよ。行こうぜ。」
「行こ。行こ。」
優卯くん一人だけを残して、みんな帰ってしまいました。

それまで、いつもみんなの中心にいた優卯くんは独りぼっちになってしまいました。
たくさんの友達の中でいつも笑っていた優卯くんに笑顔はありませんでした。
一度泣き止んだはずの優卯くんからはまた涙があふれていました。
朝からのうれしさの涙とは違って、今流しているのは友達をなくしたという悲しみの涙。今はただそれだけでした。

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