「涙のあとに」

 第4話

優卯くんはみんなに言われたことが悔しくて、悲しくて、泣きながら帰っていきました。
家の前で一度立ち止まり、涙だけはふいてドアを開けました。
「ただいま」
いつもは元気なあいさつも今日はほとんど聞こえないほどの小さな声。
「優卯?帰ったの?」
お母さんが聞いても返事がありません。
いつもは元気に帰ってくる優卯くんだからこそ、お母さんは不安に思い、あわててふり返ると、そこには、呆然と立ち尽くす優卯くんの姿がありました。
「優卯。どうしたの?」
「…お母さん。…ぼく…ぼく…ごめんなさい。」
と、ふき取ったはずの涙は、その言葉とともにまたあふれていました。お母さんはそっと優卯くんの前に座り、優卯くんの頭をなでながらこう言いました。
「いい?優卯。いけないことをしたのはわかるよね?」
涙で言葉も出ない優卯くんはしっかりと顔を縦にふってうなずきました。
「私たちは、考えるっていう力を持っているの。でも、私たちは機械じゃないから、間違えることもあるの。優卯は元気な男の子だから、だめって言われることはやってみたくなるよね?優卯はルールを守れなかった。みんなに言われたことは当然のことなの。でも、もっと大切なのは同じことを繰り返さないこと。誰だって間違えることぐらいあるんだから。算数のテストなんか間違いだらけでしょ?」
優卯くんが隠していたテストを見せながら、言いました。優卯くんの涙はすっかり消えて、照れ笑いに変わっていました。
「でも、みんなが、ぼくのことをもう友達じゃないって言うんだ。」
「そうね。私も優卯の友達だったら、そう思うかもしれない。でも、友情は簡単にはなくならないから。優卯はみんなと生まれたときから友達って決まってたの?違うでしょ?最初に勇気を出して話しかけたんだよね?だから、明日もいつもどおり大きな声で“おはよう”って言うんだよ。みんなはもしかしたら、返事をしてくれないかもしれないけど信じるの。みんなと優卯の間に友情があることをね。謝ることも忘れちゃだめよ。わかった?」
「うん。」
優卯くんにもしっかり笑顔が戻っていました。お母さんの魔法の言葉のおかげで…。

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